ベイビー・ブローカー

是枝監督がメガホンを取った韓国映画

タイトルから、少し物騒なこの映画は、世界的な名匠といっても過言ではないだろう「是枝裕和監督」が韓国で撮影した映画である。放映年は2022年。

主演は、ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、IU、ぺ・デュナ、イ・ジュヨンなど、主演級俳優が名を連ねる映画である。

しかし、とにかくいい意味で「地味」なのだ。

私はこれらの俳優が、本来持っている魅力を半減させてでも、この物語自体を引き立てるために、一見「地味」にみえても抑制された素晴らしい演技をしていたことが印象に残った。

物語の展開はスローではあるが、この映画にはそれぞれのキャラクターに心の機微があり、味わい深いものがある。

以下はおおまかなあらすじである。

ある日の大雨の夜、教会にある赤ちゃんポスト前の路上に、生まれて数ヶ月の赤ちゃんを置き去りにする女性が現れる。

その赤ん坊は、教会の養育施設にではなく、そこで働く2人のブローカーの手に渡る。彼らの家業はブローカー。

教会に預けられる赤ん坊を自分たちで受け取り、自らで養子を受け入れる家族を探して売るのだ。それも大金で。これはれっきとした人身売買である。

そしてその2人を追いかけ、人身売買の現場を抑えて現行犯逮捕したい2人の女性刑事。物語はこの夜から始まる。

翌日、赤ん坊の母親は赤ん坊を置いてきたことを思い直して教会に戻るのだが、既に赤ん坊は2人の男に手に渡り消息不明であった。

赤ん坊を連れ去った男の1人(ドンス)は教会の用意気施設で働いていたため、最初はしらばっくれるものの、警察沙汰になるのも面倒と、赤ん坊と母親を引き合わせることにした。

母親(ソヨン)と赤ん坊を引き合わせ、2人の男、サンヒョンとドンスは、この赤ん坊を母親が育てられずにどうせ捨てたのならば、せめて納得のいく養父母探しを手伝う(この時点では金のためだが)ので、母親にも同行するように説得するのだった。

こうしてこのちょっとおかしなロードムービーが幕を開けるのだ。

子を捨てること、拾って売ること。どちらが悪いのか。

実はブローカーに手を染める男(ドンス)も親に捨てられ養護施設で育った過去がある。

母親はきっと迎えに来るという手紙を残してドンスを施設に置き去りにしたのだが、

手紙を残された捨て子は、養子縁組も難しくなるそうだ。

なぜ自分も捨てられた壮絶な過去も持つドンスは、赤ん坊を捨てたソヨンに対して辛く当たるのだった。

一方で、人身売買をするドンスをソヨンは心底軽蔑し、道中二人は喧嘩をし、サンヒョンはなだめるのだった。

子を捨てることと、その子を拾って売ることどちらが悪いのか。そんな重たいテーマを内包して映画が進む。

しかし、ドンスにもソヨンにも共通することは、この赤ん坊に相応しい親を見つけることだった。

そして、ドンスが単なる金目当てでないことをソヨンが理解し、

ソヨンが子を捨てざるを得なかった理由をドンスは理解をしていくのだった。

みんなが優しい擬似家族

こうして2人の男と、子を捨てた母親、そして赤ん坊の4人の旅は続く。

道中、もう一人の男の子がこの擬似家族に加わり、次第に血のつながった家族ではないのに、本当の家族のようにお互いを支え合っていくのだった。

この家族が解散するときは決まっている。赤ん坊が納得のいく価格で売れたときだ。

でも、だんだん誰もそれを望まなくなっていく。

ソヨンも本当は赤ん坊と一緒に暮らしたいのに、それが赤ん坊のためにならないと思っている理由がある。

だからこそ、ちゃんとした養父母を見つけてあげようと必死になっているのだ。

そのことがだんだんと明らかになってきたときに、自分自身も捨てられ母親を憎み、

子を捨てる親を憎んでいたドンスにも大きな変化が訪れる。

そしてサンヒョンは、この血のつながっていない家族を守ろうと奮闘していくのだった。

血のつながりはないけれど、彼らは一瞬家族のような絆を得たのだった。

産まれてきてくれてありがとう

誰かが自分に産まれてきてくれてありがとうといってくれること。

自分の幸せを願ってくれていること。

許されること。

彼らにはこれまで、そんな経験もなかったのだ。

でもこの擬似家族との仮初めの生活の中で、彼らは一時でもそのように思ってくれる家族を得たのだった。

それぞれが変化をして、この映画は清きよしい余韻を残して最後を迎える。

結局一人一人が産まれてきて愛されるのある。

この映画のテーマ

産まれてきてありがとう。といってもらえることの尊さ。

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