役所広司主演の2021年公開の映画。
役所広司演じる元殺人犯が13年の刑期を終え出所した後の娑婆での日々を描く。
脚本、監督は「ゆれる」「永い言い訳」などの西川美和。
豪華な演技派俳優陣
日本映画の良いところとして毎回思うのは、自分的に豪華だと考えるキャスト陣が
一堂に会するそんな映画が多いことですが、
映画好きにとっては、演技派の俳優が揃う映画に思いもよらず巡り会うと、
心の中でガッツポーズをしてしまいませんか。
この映画の圧倒的良いところは、
役所広司、仲野太賀、橋爪功、北村有起哉、六角精児、長澤まさみなどの俳優陣。
特に自分的には、仲野太賀と北村有起哉が脇を固める映画にはずれはないのです。
そして、この映画でも、役所広司はもちろん、彼らの演技はやはり味わいがあって良かったのです。
主人公に感情移入しかけるも、途中で共感できなくなる仕掛け
この映画を見ようと思う人は、まず、この役所広司演じる殺人犯「三上正夫」が長い刑期を経て、
過去を悔やみ反省して、いかに世に馴染んでいくかを見届ける映画を見るつもりでしょうが、
しかし、この映画はそんなに簡単ではなかったです（そもそも最初から、三上の本質を表すような、不穏なセリフが散りばめられている）。
最初のうちこそそれらのセリフは違和感でしかないのですが、映画も序盤の終わりに差し掛かる頃に、三上正夫の本性がみえてくるのです。
はい、明らかにヤバいやつですし、手助けしようとする周りの人々も明らかに引いていきます。
なんだ、自分は感動の物語を見ているわけではなく、一人の人間の破滅を見届ける、そんな映画を選んでしまったんだ。
感動するような映画を一本見ようと思ったのですが、この展開には少しがっかりとした気持ちになりました。
しかしこの映画のすごいところは、ここまでのこの構成が実は仕掛けであり、ここから物語が回転し始めることです。
三上と、その不器用さを支える人々
三上がどんな本性であっても、周囲の関わる人々は一生懸命に支えようとします。
三上がすごい剣幕で怒鳴り散らしたとしても、そんな三上をなだめて、支える人たちがこの映画にはいました。
仲野太賀は三上のためを思って泣き、北村有起哉も公務員役でありながら、三上のためにできることをし、アドバイスをします。また六角精児も三上を励まし続けます。
三上の本質は変えることは本人でも難しい。でも周りが三上という人間を理解し認めた上で、
彼に更生（人生の再生）への道筋をなんとかつけようとするのです。
私は、三上自身でなく、そんな周囲のひたむきさにより、この映画でも泣いてしまいました。
本当に人生とは捨てたものではない。
クソみたいな生きづらい社会であっても、その中で一生懸命もがく。そのうち仲間もあらわれる。
すばらしき世界とはこの世の中に対する皮肉でありつつも、実際にそうであって欲しいという
作者の願いなのだと私は思いました。
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